What's new? New York! ニッパー中山 & ケイジ中山のブログ

NY在住?0年のライター&カメラマンがハードコアな三面記事などを紹介。

「ニッパー」とは何を意味するか?

文・ニッパー中山
イラスト・シュン山口
 祖国ニッポンを飛び出し,紐を育てる紐育(ニューヨーク)で、過ごすは幾星霜。チャイナタウンの電髪設計で身なりを整え、Bagelをかじりながら行く年来る年を考え、これからは “ニッパー”、これがミーに一番ふさわしい名前じゃないか?
 「レディースアンド・ジェントルメン(男性と女性の方々)!」と前口上よろしく大声を放ったのはいいのですけれども,グリニッチ・ビレッジはクリストファー通りの畔より、アタイ達を忘れちゃーフン、フン、フーンという美川憲一風の妖しいチャチャがはいりました、ので、もう一度やりなおしをさせていただきます。「レディーズ・アンド・ジェントルメン、、、アンド、、、アザーズ!」。やっとビッグなパチパチが聞こえてきました。やはり万人に愛されるというのは難しいものですね。
 ところで自慢じゃないがこんな秀逸で詩的な響きの、その上、自国言及的な言葉「ニッパー」を発明したのは偶然の賜物であり、昔風に申せば、否、中国語のヒモが育つ紐育(ニューヨーク)で、であった。その日は氷点下10度にも下がり、厳冬到来の摩天楼の谷間には、風速55メートルにも及ぶ突風が吹き抜け、ホームレス五千人が市営駆け込み寺シェルターを目指して階級移動していた。ワークス帰りの私のポケットには、グリーンビルといってもサウス・キャロライナ州グリーンビルでなくて、一円札(なつかしい表現ですなー)、つまり1ドル紙幣しか残っていなかった。
 マドレーヌ菓子を紅茶へ浸す心境とはほど遠く、空腹なはらをかかえて、現ディンキンズ市長によって賛美された「ゴージャス・モザイク」の雑踏のなかでジャズのビートのような鼓動が流れていく悲しい人生の一瞬であった。ふと、その時、長いこと探し求めていた概念が脳裏へひらめいた。唯脳論の養老先生有り難う、そして、必要は発明のお母さん有り難う。
 つまり、遠く故郷を離れて幾星霜。この国でこの町で多くのユニークな日本人と出会った。「三十歳になるまでは女のほんとうの顔を描きだすことはできない」といったのはバルザックであり,ミーも十分な齢を過ごした。そして、当地のBrother Manの波瀾万丈、悲哀絶倒なる真実の姿を描きたいと思っていたが、ミーの適切なペンネームが思い浮かばず悶え苦しんでいたのだ。
 そこで、「ミー思うに我菊印にあり」で、パスポートのナショナリティー欄には Japanと記されているが、ジャパンは日本の国名の英語表記である。しかし、公的な日本の紙幣、切手やオリンピックの日本選手団のユニフォームにはNippon(ニッポン)と表記され、古代より我が国の神聖なる国号である。
 この「ニッポン」を解体し,接頭辞の「ニッ」を取り、「パー」という悲哀のこもった日本語感動詞の、あじゃ〜あパー!とか、じゃんけんでグー、チョキ、パーとか、あの人は頭がパーかしらと応答・呼び掛ける際使用されるパーを接尾辞にして、ニッ+パー=ニッパーという語を創造した。するとマラルメが「花!」とつぶやく瞬間に立ち昇るにおやかな香気にも匹敵する、新鮮な新日本人の斬新で、多少ミーを卑下するイメージが頭のなかでパーと現前されるでしょう。これは詩学の鞄語でNipper (ni-pper)となり、世間への断りなくミーのニューネームとした次第である。
 そこで、新しいアイデンティティーには新しいシンボルやポーズが必要である。昔より歌舞伎の演技や演出において、よく「絵ごころ」が必要だといわれる。いかなる場合も「絵になる形」の美しさが第一であり、これを「絵画の見得」と呼ぶ。これは役者が美しいポーズをとって一瞬静止して見得を切ることである。この見得は、元来、神仏のガッツ・ポーズをまね、その力を預かり顕示させるものであった、といわれる。
 現代ではとくに芸能人、政治家、スポーツマンから子供まで、その存在、歓喜を最大限アピールするとき、しかと極まるべきポーズがありそれぞれいろいろと工夫と創造がみられる。細川首相はアメリカの大統領の記者会見のスタイルをマネして「ペン一本指し」ポーズを決める。サッカーのカズは得点を得たときの「ポコチン触り」ポーズ、平均的な子供達は「Vサイン」ポーズ等がある。
 そして、ミーも、究極の「ニッパー・ポーズの決め方」を暗中模索していたが、ついにキワめた。それはミーの場合いとも安易でバカバカしいアイディアを想像の源泉にもつ。つまり、電話番号の当て字のように「電話会社」は874−2525(ハナシ、ニコニコ)とあったりするように、ニッパーのニッは数字2にあてはまり、中指と人指し指を立ててVサインのごとくすれば2となり、そして、パーはジャンケンのパーのように片手を広げればいいわけだ。そして左図がミーのシンボルマークであり、ニッパー・ポーズである。可愛いでしょう!?
(1994年1月1日付、 ニューヨーク情報誌OCSNEWS掲載)