What's new? New York! ニッパー中山 & ケイジ中山のブログ

NY在住?0年のライター&カメラマンがハードコアな三面記事などを紹介。

NYで警官が丸腰の黒人へ“50 shots” 発の銃弾を浴びせて射殺し、黒人市民が憤怒!

文・写真/ケイジ中山

「都市は起きる、黒である僕たちの、悲しみ」(ルロイ・ジョーンズの詩より)

NYでブラック・コミュニティーの怒りが遼原の火のごとく燃え広がっている。
 NY市の5つの行政区の一つにクイーズ区がある。マンハッタンの東で同区内のラガーディア空港とJFK空港間にジャマイカという町がある。よくNYへ来る日本人ならJFKからモノレールでマンハッタンへ入るときの乗り換え駅ジャマイカを御存知かもしれない。あるいは音楽ファンなら “リッチ・オア・ダイ・トライン” で主演した人気ラッパー50セントの出身地としてこの町名を覚えているかもしれない。このジャマイカカリブ海の国ジャマイカとは関係がなく、昔のアメリカン・インディアン、ジャメコ族に由来している。現在、主にアフリカン・アメリカンカリブ海諸島からの移民が住んでいる地区である。
 11月25日(現地時間)、同区の居住者で二人の子持ちの黒人のショーン・ベル(23才)は数時間後の結婚式を控え、友達二人に誘われて独身最後のパーティーに、クイーズ区ジャマイカ地区のストリップ・クラブ “カルア・キャバレー” へ繰り出した。その夜、そこでニューヨーク市警の私服警官が潜入して不法な麻薬と拳銃と売春の容疑で調査を行っていた。朝4時頃の閉店後にクラブ外でお客達が激しい口論を起こした。これを監視していた警察側は不審な行動から彼らが銃を所有しているとみなした。ベル氏が車へ友達と一緒に戻ったところで、警官が逮捕に出たがベル氏は車を急発進させ覆面パトカーへ突進して逃走を図った。白人2人、黒人2人とヒスパニック系警官の5人が一斉に拳銃から50発の銃弾を放った。ベル氏は射殺され他の二人は重体となったが、車内から拳銃は発見されなかった。目撃者によると現場から逃亡した者がいて、パトカーがベル氏の車へ突入し警官が飛び出し“ストップ” も“フリーズ” もいわず発砲した、という。警察は第4の容疑者を追っているが、12月2日現在、まだ逮捕されていない。
 翌週、ニューヨーク中の黒人市民が市警の過剰攻撃に対して憤怒のエネルギーを爆発させた。公民権運動の指導者で故キング師の愛弟子であるジェーシ・ジャクソン師と2004年に民主党より大統領へ立候補した運動家アル・シャープトン師らが先頭に立ち、市に対して大規模な抗議デモ集会が催され “ノージャスティス、ノーピース(正義なくして平和なし)!” とシュプレヒコールした。即座にブルームバーク市長は“過剰であった”と遺族へ異例の陳謝をしたが、これまで市警は丸腰の市民を多く射殺しており、”Police brutality”(警察の残忍行為)は一向に衰えない。2004年にも黒人ティモシー・スタンズバーク(19才)がブルックリン区で銃殺されている。
 12月1日(現地時間)の夕方、マンハッタンから地下鉄E線へ乗車してJFKエアポート駅で下車して、地上へ出るとロングアイランド鉄道のジャマイカ駅である。そこから東へ18ブロック歩いた。韓国人経営の八百屋の軒下にはヤムやユカの芋類、パパイヤーやマンゴーが売られている。自動車修理工場、ハウジング・プロジェクトを通過するとバリケードが張られてNYPDの警官が重々しく警戒していた。夜7時よりここのクリスチャン・コミニュティー教会で、ベル氏の結婚式を司る予定だったレスター・ウィリアム牧師が葬儀を司るのだ。ラッパーのナスとNBAクリス・ウェバーが葬式費用を寄付した。白の霊柩車の前に市長代理や政治家、宗教家が続々と到着し、500人以上の黒人市民が「ショーン・ベルへ正義を!」のポスターを手にして長蛇の悲しみの列となった。野外スピーカーから “我々は警官を憎悪していない。我々は人種を憎悪していない。我々は正しくないことを憎悪する” とシャープトン師の悼辞が流れた。帰りにジャマイカ駅前の射殺現場へ足を運んでみた。ビルの壁に犠牲者の家族写真や新聞の切り抜きが貼られ、キャンドルや花束が置かれて、人々が沈痛な面持ちで祈りをささげていた。
12月2日(現地時間)、ニュー・ブラックパンサー党が組織した抗議のデモ隊約350人が地元の市警察103分署へ押し掛け、“警官を刑務所へぶち込め” と叫び警察と一触即発の事態となりポリス・パワーに対してブラック・パワーで対峙した。
 今、NYのヒップホップ・ラジオ局ではラッパーのパソーセの故ベル氏へ捧げる新曲 ”50 Shots”(50発の銃弾)がヒットしている。
 この事件はこれから裁判へかけられ、ニューヨーカーは固唾をのんで成り行きを見守っている。