What's new? New York! ニッパー中山 & ケイジ中山のブログ

NY在住?0年のライター&カメラマンがハードコアな三面記事などを紹介。

若者よ、革命を想像(スモーク)せよ!

西はマリワナで東はマリファナ
 シェークスピアいわく “君の美を五月晴れにたとえようか” という季節。冬にチャイニーズのオバちゃんと競争して拾ったギンナンの木々も葉っぱをつけ、このグリニッチ・ビレッジのワシントン公園は観光客、大道芸人にまじって、異形のストレンジャートライブが三々五々、ホップ・ステップ・ジャンプと蝟集してきた。日本のバロックの原像、安土桃山時代にカブクと思われるのは、ニワトリのトサカのように髪をレッド・イエローと染めて破れジーンズのパンク族。肩まで長いヘアーをクール・ブリーズになびかせ、レース付きロング・スカートやベルボトム・パンツにサンダル履きがヒッピー族。真剣なおしゃべり(ラップ)をしているのがイッピー族。 ヤッピーは追い返された。
 スワッと気の早いライジング・サン観光のツーリストは、ニューヨーク名物 “ポスト・モダニズム” のパフォーマンスかと取り囲んだが、違うのでありました。これは年次恒例、ウ〜ヒ〜ヒ〜!知る人ぞ知り、知らない人は知らない、アタリ前田のクラッカー的なリーガナイズ・マリファナ大会である。
 それで、ハナシの続きは何だったっけ。ソ〜ウ、ソ〜ウ、それは喫煙集会(スモーク・イン)である。スモーク・インといっても、例の最近制定された公衆における禁煙に関する法律に反対して、ヤニ中毒者がマルボロ、ラーク、ケントなど、要するに政府公認の市販タバコを腹いせにスパスパと青天白日下で吸うのではないの。これはれっきとした、60年代から70年代にかけて高揚したアメリカ対抗文化(カウンター・カルチャー)のグラス・ルーツ(草の根)運動であるのだ。
 畢竟、言語学的にみても、“イン” とか “グラス” は両義的な語彙であります。祭日に主に宿泊するのが “ホリデー・イン”、集まって踊ったりして魂の交換をする集会が “ビー・イン”、学生がデモで座り込むのが “シット・イン”。トイレ滞在は “シィト・イン”。間違わないように、念のため。ジョンとヨーコが得意だったのが “ベッド・イン”。
 グラスのスラグというかスラングのグラス(草)はマリファナである。ウェスト・コーストはマリワナ、イースト・コーストはマリファナと発音し、微妙に異差されているのだって。日本ではマリファナの草の葉っぱからとって、単に “ハッパ” と若者の間で呼ばれ、イースト・ビレッジのセンマル通りの広小路A では、この日本語がディーラーのニッケル・バック売りで立派な市民権をえている。マリファナ漬けの人を“ティー・ヘッド”。その他、“ヘンプ”、“カナビス” や “スモーク”、“ポット”、“ウィード(草)”、“フィバー” “ガンジャ”、“セス” など、いろいろな俗語で呼ばれている。また、巻きタバコを “ジョイント”、その残りを “ローチ”、以上。インディアン嘘つかない!
 それで集会に参加し、ストーン(酩酊)になるまえに日米大麻比較論へテーゼを進めておく。
 大きな麻(あさ)とかいて大麻(たいま)と読む。中央アジアが原産地でクワ科の一年草。アラブのラクダ商隊がシルク・ロードを通って帰還する際、お茶代わりにたしなめたのが始まりとされ、オリエンタリズムとして世界各地へ分布した。ホンマかいな?戦前、旧薬事法で、印度大麻草とその樹脂およびこれを含有するものは麻薬扱いを受けたが、印度以外の大麻草はその対象外とされた。だからチョット変な匂いする洋モクぐらいに思われ、平気の平座で日本中の紳士がベトナム産、タイ国産を町中で吸っていた。ところが敗戦後、日本国憲法制定上のアクシデントとして、1948年、連合軍総司令官マッカーサーより大麻取締法が強制的に押しつけられた。これが現在も継続しているワケ。若者よ、革命を起こせ!若者の娯楽を奪い返せ!とかなんとかいっちゃって。
 ところで、久保田二郎ハカセ説によると、日本産で第一位の上ブツが奄美大島モノである。北海道モノが第二位である。よってなぜこの妙薬が南北分断されて野生するのか、ギネス級の世界の七不思議の一つに数えられている。そこで、奄美大島在住のヤポネシア論の島尾敏雄センセイ説に依拠すると、そもそも前古代史において、北海道のネイティブ・トライブであるアイヌが日本列島を縦断し、沖縄まで南下した時期があった、と述べる。つまりアイヌが南方へ持ち込み改良して最高ブツに育成させたのだ。よって日本国マリファナ伝播起源説を筆者はアイヌと看做す。やはり、問題は周縁から出てくる構造があるのね。よって周縁論の山口昌男センセイに依拠すると、このマリファナ天皇制が表層・深層においても通底しているんだって。世界はまったくどこでエンカウターするかわからない。
 昭和25、6年頃、皇居の旧外堀の石崖ぷちに野生のマリファナが生えているというウワサが飛んで、夜中にそれを取りにいった楽隊員がお堀に落ちたそうである。外にあるなら内はもっとあるのではないかと誰もが考えるだろう。そう、その通り!皇居の中の陛下の吹上御苑は野草の群生となっている。そもそも、生物学者としての昭和天皇には雑草という概念は認められない。おそれおおくも全ての雑草はそれだけで学術的研究価値を持ち、かたくなに一切の雑草を抜くことを許されない。このなかにマリファナが野生しているのだ。今度、お正月参賀の時、とりに行ったら。責任は持てないけど〜ぅ。蛇足ながらミーは東京モノのブツ名を “フジ” と命名する。

個人の健康管理に立ち入るな!
 60年代のニューヨークのイースト・ビレッジはマリファナ入りアイスクリーム、それも上モノのアカプルコ・ゴールドやパナマ・レッド入りが堂々とイースト・ビレッジで売られていた。ドラッグ・カルチャーのその頃は、あらゆるヤクがなかば公然とストリートで売られ、ハッシッシもいっぱい出まわっていたのよ。それが、エイズの元凶とかなんかでヤクの取り締まりがきびしくなってしまった。
 それでも連邦麻薬情報機関の発表によれば、86年度にアメリカでマリファナを喫ったことのある人は、常習者、非常習者合わせて2000万人以上と推定され、プロフェッショナル栽培者が9万〜15万人、アマチュア栽培者が100万人以上とされる。世界の年間収穫量が9365〜1万3405トンで、その内7500〜1万1650トン(80〜86パーセント)がアメリカへ輸入された。また、2100トンが国内生産された。不況にあえぐ零細農民の最も良い現金収入源がマリファナ栽培であり、生産量が最も多いのはカリフォルニア州で、続いてハワイとオレゴン州である。
 マリファナ専門誌「ハイ・タイム」は、室内用マリファナ栽培ランプが85年だけで3100万個売れ、御存知、竹でもないのに “バンブー・ペーパー” と称されるスペイン製巻き紙が4500万ケース輸入されたと報告する。
 1975年、アラスカ最高裁判所の判決は、成人自宅で個人的に使用するためのマリファナ所持は法律的に守られるとの見解を下し、売買以外の所持は自由と認められている。次にオレゴン、カリファルニアでは個人使用が認められている。しかし州により重罪に処せられる所もあるから気をつけること。ちなみに、ニッポンの友人がマンハッタンで路上のディーラから購入した時にポリスにみつかり、ブツは没収されて罰金チケットをもらい、後日、裁判所へ60ドルを支払っただけだった。
 ワ〜イ〜ワ〜イ、ガ〜ヤ〜ガ〜ヤ。この日だけは警備のNYPD警官たちも大目にみていた。この日、スクエア・パークはヒップな解放区(カルチェ・ラタン)となった。静岡でもないのにティー(茶)の香りが充満し陽気なマリファナ大パーティーがあけっぴろげに催された。ペットの犬やネコ、野生のリス、ハト、モグラも参列し、パンツをはいたサル達をソット肩をすくめて冷笑し、騎馬警官の馬は興奮してポリスを放り投げ、幻のニンジンを求めてバク進してしまった。 
 やがて、ロック・コンサートとなった。クアウウウウ、ギャアアア。エレキ・ギターが嵐のようにさけび、スピーカーが金属音でサク裂した。音が、サウンドが、チュウハイし、早くも、目も耳もマリファナでホンワカのマイクロバッパー、ティニーバッパーはラリはじめてダンスをおっぱじめた。どこからとなく、まわしのみのジョイントが10秒ガンガンと回ってき。皆がハイと挨拶しながら酩酊(ハーイ)となり、スピリットが高揚(ハーーイ)すると奄美のハブのように身体を悶えさせ参加者たちのエネルギーが点火爆発した。マーチだ。パレードだ。ページェットだ。若者よ、革命を想像(スモーク)せよ! 「Legalize Pot (マリファナを公認しろ)」のノボリを先頭に数千人がシュッパツー進行。百花放縦。勝手気侭。NYPDのポリスに守られながら、いなご集団のごとく、ザクト・ライオンのごとく、ZIG・ZAGと数千名がトリップしながら行進した。道行く人たちは、ただ呆気にとられ、ただただ、オー・マイ・スモークと驚きの声をあげた。そのあと、その声は歓喜となった。
 路上に落ちていたシガレット、ナプキン、トイレット・ペーパーらの紙類は、ことごとくジョイントに使用された。市のサニテーション・デパートメントもびっくりするほど、デモが通過した後はクリーン・アップされ、アイ・ラブ・ニューヨーク・キャンペーンに一役買ったのはいうまでもない。そして、この日は、市長も御満悦だったといわれる。
 最後に60年代のヒッピーの聖地イーストビレッジのトンプキンソン公園でピース&ラブのロック・コンサートが開催された。
 「我レオモウ。汝ニハ服一ノ『マリチャン』ガ必要ナリ、一服ハ聖ナルカナ」。あたり一面に至福の時間が訪れ、やがて摩天楼に夜のトバリがおりてきた。ジ・エンド、Dig it!

ワシントン・スクエア・パークにて